最後の陽が昇る日まで



右は、何もない。
左には・・・・わたしは息を呑む。


バイク、だろうか。
転んでしまったのかバイクが倒れて、人が近くに倒れている。
ピクリ共動かない。


「こ、心晴様?」
「ひ、人が・・・倒れているわ」
「えっ!?」


わたしは、家から完全に出てその人の所まで行くと、突然ムクリと起きた。


「ヒッ」
「ーーーーーって」


ヘルメットを脱ぎ、痛みに顔をゆがめるその人を、わたしは知っていた。


「ーーー千景?」
「あ?・・・心晴」
「ど、どうしたの?」


恐る恐る近づけば、千景は何でもない、と無表情だ。


「何でもないって・・・」
「転んだだけだ」
「え、大丈夫なの?」


見れば、原付バイクは倒れてエンジンは止まっている。
バイクに乗っていたってことは転んで生身の体が地面にたたきつけられたってことだ。
自転車に乗って転んだのとは衝撃がちがう。


千景は、ゆっくりと立ち上がる。
外灯の明かりの下、千景の頭の天辺から足まで大丈夫か見たところ、ズボンが大きく膝の所が裂けていた。覗く膝からは血が見える。


「怪我・・・」
「あ?これくらい・・・」
「ちょっと来て」


わたしは、千景の手を取り、引っ張る。


「なんだ・・・て」
「診て貰おう。大変なことになるかもだし」
「は?」
「後藤さん、飯島先生に連絡してくれる?」
「こ、心晴様?」
「お願い」


後藤さんにお願いして、彼女は納得しないままわたしのお願いを聞くために家の中へと走る。
飯島先生には申し訳ないけれど、来てくれるかな。