最後の陽が昇る日まで




☆ ☆ ☆


次の日は、体調もすっかり良くなって、飯島先生からも大丈夫だとお墨付きをもらった。
いつものスケジュールをこなして、少しだけ自由時間を過ごすことにする。
しばらくは外に出かけず家の中でおとなしく過ごすことにする。
部屋のカーテンは開けて、夜の景色を見ながら、本を読んでのんびりとする。
しかし、ページを捲って文章を読むけれど、どうにも頭の中に入ってこない。
集中しようと思っても、すぐに頭は違うことを考え始める。


違うこと、というか頭にはずっと千景のことが何故か離れないのである。
銀髪で、どこか近寄りがたい雰囲気を出している千景。
昨日は、たまたま家の前にいて少し話をした。
本当に少しでわたしの体調を心配してすぐにさよならしたけれど、心の片隅ではもう少し話をしていたかったな、なんて思ってしまったのだ。


きっと、同じような年の子と話すこと何てなかったからだとは思うけれど、不思議な感情が胸の中で小さく芽を出そうとしているような気がしてならない。


会うことがなくなればきっと消えてなくなっていくだろうけれど、できれば、なくなってほしくないな、とも思ってしまう。


少し、モヤモヤとした気持ちを抱えながら、1人部屋で過ごした。


そういう日が何日か続く。
日にちが過ぎれば、最初ほどモヤモヤは薄れていった。
このまま消えてしまうのかな、と寂しい気持ちが芽生え始めたころの夜のことだ。