最後の陽が昇る日まで




見かけによらず律儀なひとだな、と感心する。
ぱっと見は、近寄りがたい外見と雰囲気なのに、やることは紳士的な感じで、これが俗に言うギャップというものなのだろうか。


「ーーーもう、会うことはないんだよね・・・」


言葉にすると、なぜだか寂しい気持ちになった。






☆ ☆ ☆



「めっずらしー」
「あ?」


ニヤニヤとした顔で、劉生が俺の腕を肘でつつく。


「あ・の、女嫌いで有名な千景が、あの子に自分の名前を呼ばせようとするなんてさ」
「別に・・・」
「深い意味はないって?そうかな?」


ニヤニヤが止まらないのか、しまいには色々と妄想始めた劉生を放置することにして、俺は目の前にあるベンチにドカッと座る。
さっきまで心晴が座っていたからまだ少し温もりが残っている。


「ーーーあいつと、どこで知り合った?」


達哉に聞かれて、俺はすぐに応えた。


「俺が怪我した日・・・さっき言っただろう」
「そうだけど・・・」
「あいつらにやられた時、心晴の家の前にいたらしい。あいつが出てきて、ハンカチを渡された。それだけだよ」
「・・・そうか」
「あぁ」


達哉は納得した様子で、それ以上は何か聞いてくるようなことはしなかった。


「心晴ちゃん、俺たち見てもなーんにも反応しなかったね」
「・・・そうだな」
「不思議な子だったねー」


また、会えたら色々聞いてみよー。
そう言って、劉生は、スマホを取り出して弄り始める。


『ーーーまた』


なんでか分からないけれど、口に出していた言葉。
心晴は、少し驚いたような表情を見せた。


また、俺は心晴に会いたい、そう思ったのだろうか。
自分でもよく分からなかった。