思う、だけで、私は全てを諦めていた。



だって、私の残された時間はあと、わずか。
そのわずかを私は、限られた世界で生きていくーーーそう思っていた。






☆ ☆ ☆


ーーーーーピピピピピッ
耳の側で、電子音が鳴っている。
これは、目覚ましの音。
起きて、の合図。
でも、まだ眠りから目覚めたくなくて、頭は起きているのに目を瞑ったまま電子音をそのままにベットでごろごろしていた。


少しして、コンコンとドアをノックされる音とガチャリと開く音。
誰かが入ってくる気配に、もう来ちゃったのね、と私は心の中でため息をついた。


「心晴様。起きる時間ですよ」


低めの声の主が、目覚ましを止めて私の体を揺する。
もうちょっと寝ていたかったのにな、と残念に思いながら私はノロノロと目を開けた。


「ーーーおはよう、梶」
「おはようございます。心晴様、電気を付けさせて頂きます」
「はい」


パチッと部屋の電気が付いて、眩しくてぎゅっと目を瞑る。
ゆっくりと目を開けると、目の前には燕尾服をきた青年が立っていた。
名前は、梶 広喜(かじ ひろき)。確か年は、30歳後半だったと思う。
物腰が柔らかく、めがねがよく似合う好青年だ。
私にずっと着いてくれている執事。
それが、梶だった。