庭師に整えられた庭は、いつ見ても綺麗だった。
庭の真ん中には大きな噴水があって、その周りにはたくさんの花や木が植えられている。


「ん~!」


大きく伸びをして、肺に一杯外の空気を取り込む。
外に出ると、家の中での窮屈感から解放され、ホッとできる。


「ふぅ・・・ちょっと歩こう」


私はゆっくりと庭を歩き出した。
ポケットには、さっき梶からもらったキーホルダーが入っている。


1人での散歩は、夜なのもあって少し心寂しさを感じる。
でも、私が動ける時間帯は、今の時間だけなので仕方がない。
一般的には今はほとんどの人が眠っている時間帯だ。
両親ももう寝ているだろう。
今、この屋敷の中で起きているのは、私と、梶だけだと思う。


ーーーなんで私なんだろう。


この病気になってから、何度思ったか数知れない。


世の中には何億人という人が生きているのに、その中でこの病気は私を選んだ。
そこに何か意味があるのだろうか、と考えても全く答えは出てこない。
私が思うのは、ただいろんな事が制限されて、お日様の光を浴びることができなくて、陽の下を歩くことができない。そして、命に限りがあるということ。