外に出るときは、必ず誰かが側についてくれている。
何が起こるか分からないからだ。
でも、今日は、一人になりたかった。
「・・・今日は、一人で出たいの」
「心晴様、それは・・・」
「お庭だけ。お庭だけだから・・・おねがい」
ほんの少しだけでいい。
一人でいさせて。
そう思いを込めて梶を見る。
「・・・お庭だけですよ」
「ありがとう!」
梶はやれやれとしょうがなく折れてくれた。
ここしか居場所のない私のたまにしか言わない我が儘を聞いてくれた。
「これを」
梶は、ポケットの中から小さな熊のぬいぐるみのキーホルダーを私に渡した。
「これは?」
「目を強く押すと私に異常が分かるようになっています。もし、何かありましたら絶対にすぐに押すようにしてください」
絶対に、とすぐに、を強調された。
「・・・心配性ね」
「普通ですよ」
肩を竦めて見せられ、私は少し笑った。
梶に見送られて、私は外に出た。
今は、5月。
外は、少し肌寒く感じることもあるけれど、過ごしやすい。
空も澄んでいて月が綺麗。
家も大きいなら、庭も広い。
一体どれくらいの広さがあるかは分からないけれど、もう一軒、この屋敷が入りそうなくらい。


