私に向けられる愛情は、偽物だ。
長く生きることのできない娘にどう接したらいいのか分からないのだろう。
その瞬間、両親に対する私の心は凍てついてしまった。
それ以来、私は形だけ両親に顔を見せる。
すぐに自室に引っ込んで、決められたことをして、少しの自由な時間を過ごし、朝を迎える。
−−−とても、閉鎖的で心にはポッカリと穴が空いているみたい。
私の世界は、狭くて、何もない。
家庭教師の先生が来て、いつものように勉強を済ませる。
今日の科目は、英語と数学。
淡々と授業を終えて、時計を見ると3時。
後藤さんは今日は、11時までだったので、もう帰っている。
机に広げた勉強道具を片付けて、私は部屋のカーテンを開ける。
まだまだ空は暗くて、月が光っている。
今日は、三日月だ。
−−−コンコン。
「はい」
「失礼します」
ドアが開かれて入ってきたのは梶だった。
「どうしたの?」
「今日の予定は終了です。どうされますか?」
「・・・」
梶を見てから外を見る。
外の空気が吸いたい。
「・・・庭を散歩してもいいかしら?」
「大丈夫です。お供します」


