「調子はどうだい?」
「大丈夫、いつもとかわらないわ」
「そう」


両親の服は、もう寝間着になっている。
顔を見ると一日の疲労も見え隠れしていて、眠そうにも見える。


「お父様、お母様。そろそろ家庭教師の先生が来る時間になってしまいます」
「あら、そうなの?」
「準備は終わっているのか?」
「今からです」
「なら、行ってしまうの?」
「はい、また明日」


私は立ち上がって二人の頬にそれぞれ顔を寄せる。手を振って見送ってくれる両親に、リビングを出てから小さくため息をついた。


両親に会えるのはほんの僅かの時間だ。
日中は、私は寝ていて、両親は働いている。
夜になると私は起きるけれど、両親は寝る時間になる。
親子なのに会うのはたった数分・・・。しかも、これといった会話はない。
ただ、側にいるだけ。
表面では慈愛を向けてくれているけれど、本当は私を腫れ物のように扱っていることに気づいていた。
どう扱っていいのか分からない、とも言えるかもしれない。


私にバレていないつもりなのだろうけど、そういう感情って割と相手に伝わりやすい。
だからって別にどうもなくて、私はなるべく早く二人の側から離れるようにした。
一度そうしてみたらあからさまにホッとした表情を見せられ、私はショックを受けた。