「セナさん! あなた……」

どうやって辿り着けたのか分からない。
オリオンの巨体を背負い、ぼろぼろの体を引きずって泉に現れた私を見て、アルテミスは目を見開き、驚きの声を上げた。

「どうしたの? 一体……」

「私より、オリオンを……」

「えっ?」

「サソリの毒にやられているんです」

「何ですって……サソリ!?」

「はい、だから……お願いします。私の血を彼に……」

「どういうこと? セナさん、落ち着いて……」

何から話せばよいか分からない私を、アルテミスは小屋に入れてお茶を出してくれて。静かに話を聞いてくれた。
オリオンはベッドの上で横になっていて……早く、彼を救いたい。私はそう、強く彼女に伝えた。


「そう……事情はよく分かったわ」

「だから……アルテミス! 早く、私の血をオリオンに……」

だがしかし、彼女は眉を寄せて悲しげな顔をした。

「でも……セナ。あなたの血をオリオンに与えたら……今度はあなたの命が危険に晒されることになる」

「えっ……」

「だって……あなたはもう、かなりの量の血を流していて。顔色を見れば分かる。それ以上、血を失うとあなたの方が死んでしまうわ」

そう言って私を見つめるアルテミスの碧い瞳は、涙で滲んでいた。