私の瞳を刺したのは、さっきの眼光。
凄まじいほどの憤り……そして、その奥に底知れぬ悲しみを秘めている。

(どうして……どうしてこいつ、こんな目をしているの?)

まるで自分の意志を受信できなくなったかのように、私の全身は意図もせず小刻みにガクガクと震え出した。

「何故、震えている?」

「…………」

「そんなに、俺が怖いのか?」

「…………」

私は彼の威圧的な声に何も答えることができない。
ただ、全身がまるで痙攣しているかのように言うことを聞かず、ブルブルと震えていた。

彼はそんな私からフッと目を逸らした。
同時に私も彼の眼光の魔力……彼の心の中の底知れず深い森の中へ私を引き摺り込み、羽交い締めにせんとする魔力からすっと解放されたような気がした。



「俺の名は、オリオン」

正気を取り戻しつつある私の耳に、やはり威圧的な彼の声が低く響いた。

「オ……オリオン?」

私は、聞き覚えのある……しかし、俄かには信じ難い彼の言葉を繰り返した。

「そう。我こそは、海の神ポセイドーンの子、オリオンなのだ」

信じられない言葉を真顔で言うそいつの眼光は、やはり恐ろしすぎて私には直視できない。
ただ、私を一瞬にして動けなくするその瞳の魔力は、自分を神の子だという言葉に妙な説得力を持たせるのだ。

これが、私とそいつ……オリオンとの出会いだった。