「オリオン……早く、戻ろう」
私は鹿を背負う彼にそっと呟いた。
「何だ、そんなに急ぐことがあるのか?」
「そんなことないけど……ほら、日ももう暮れかけてるし、危ないし……」
私は兎に角、不安だった。
前日に私を襲おうとした、あのサソリ……黒光りする体に長い尾、大きな針を思い出すだけで全身に鳥肌が立った。
「分かった。さっさと戻るぞ」
そんな私を宥めるかのように、オリオンは元来た道を引き返した。
私はオリオンの後ろを歩く。いつもそう……彼の大きな背中を見つめながら。
その背中を見ると遥か昔、幼い頃に見つめていたものを思い出して、懐かしくて、切なくなる。
幼い頃にはその背中が私の元から永久に去ってゆくのをただ見ることしかできなかったけれど……彼は今、私の手の届くところにいる。だから、私が守らなければいけないんだ。
森の中の獣道をひたすらに歩いていた時だった。隣の茂みがガサゴソと動く音が聞こえた。
「オ……オリオン!」
その時……その茂みから、黒く大きな尾が飛び出して。その先の針は、真っ直ぐにオリオンへ向かったのだ。
私は鹿を背負う彼にそっと呟いた。
「何だ、そんなに急ぐことがあるのか?」
「そんなことないけど……ほら、日ももう暮れかけてるし、危ないし……」
私は兎に角、不安だった。
前日に私を襲おうとした、あのサソリ……黒光りする体に長い尾、大きな針を思い出すだけで全身に鳥肌が立った。
「分かった。さっさと戻るぞ」
そんな私を宥めるかのように、オリオンは元来た道を引き返した。
私はオリオンの後ろを歩く。いつもそう……彼の大きな背中を見つめながら。
その背中を見ると遥か昔、幼い頃に見つめていたものを思い出して、懐かしくて、切なくなる。
幼い頃にはその背中が私の元から永久に去ってゆくのをただ見ることしかできなかったけれど……彼は今、私の手の届くところにいる。だから、私が守らなければいけないんだ。
森の中の獣道をひたすらに歩いていた時だった。隣の茂みがガサゴソと動く音が聞こえた。
「オ……オリオン!」
その時……その茂みから、黒く大きな尾が飛び出して。その先の針は、真っ直ぐにオリオンへ向かったのだ。