「あーー、もう! どうして私がこんなことで悩まないといけないのよ」

私はキーッとなって、頭を抱えて叫んだ。
だって……元の世界では、クラス一、いや、学年でも一、二を争う美少女で通っていた。自分のことを好きになる男子なんていくらでもいたし、女子からも羨望の眼差しで見られていた。
それが、よりにもよってあんな変な、無精髭を生やした無愛想な男との仲で、こんなに悩まなければならないなんて。

だけど……

「私……やっぱり、好きなんだな」

そう……好みでもなんでもないはずだった。だけれども、あいつの過去を知って、アルテミスとの深い絆を感じた時、私の胸は息苦しくって堪らなくて、目からは自然に涙が溢れ出したんだ。

だからこそ、彼を放したくなくて……私の元から離れて行って欲しくなくて。毎日のように、オリオンの気持ちを聞いてしまうんだ。

そんなことを考えて、何だか切なくなって溜息を吐いた。そんな時だった。