森を掻き分けて洞窟の近くにまで戻った時には、もうすっかり薄暗くなっていた。アルテミスに教えられた通りに森の中を進んだら、迷うことはなくて……でも何やら、洞窟の周辺を彼が慌てた様子で歩き回っていた。

「オリオン……」

「セナ!」

彼はその目で私を認めた途端、こちらへ駆け寄ってきた。

「何処へ行ってたんだ! 探してたんだぞ……」

そこまで言って……オリオンは私の格好に気付いた。
そう。私が着ていたのは彼の好きなアルテミスの衣装で。彼の頬はほのかに赤く染まったように見えた。

そんな彼が可愛くて。私は思わず、彼の胸に飛び込んだ。

「セ……セナ?」

「オリオン! 心配してくれたのね。嬉しい!」

「何を……急にいなくなったから驚いただけだ」

赤くなってそんな言い訳をする彼はさらに可愛くて。私はぎゅっと彼を抱きしめた。



そう……アルテミスとの悲しい過去があったけれども、彼は今は私のことを見てくれている。それはアルテミスも言ってくれていたし、私自身も実は感じていたんだ。

恋なんてしたことのない私なんだけど、そのことがとても嬉しくて……温かい想いが私の胸に流れ込んできて。私は何だか、とても幸せな気持ちになったのだった。