* *


「ほら、ね。私がいれば、一発で仕留められるでしょ」

大きな熊を背負うオリオンに、アルテミスは得意げに話しかける。

「ふん。今日は俺一人でも、充分に仕留められたわ」

「あら、大人気ないわね。あなたの狩りには、繊細さがないのよ」

そんなことを話しながら洞窟へ帰る道中……二人は思わず、立ち止まった。
肌にビシビシと感じる、ただならぬ気配。アルテミスはそのオーラに覚えがあった。

「アポロン兄さん……」

そう。まるで二人の行く手を遮るかのように、アルテミスの兄、アポロン神が睨みをきかせていたのだ。

「アルテミス。お前、まだそんな野蛮な男と行動を共にしていたのか」

その鋭く刺すような声が響いた。

「あら、兄さんには関係ないじゃない。この人……オリオンは、私の恋人よ。いずれは結婚するの」

「馬鹿をぬかせ。我々は誉れ高き、ゼウスの子。このような粗暴な者との交際は、断じて許さぬ」

アポロンは眉間に皺を寄せ、青白く、刺すような眼光をオリオンに向けた。

そう……アルテミスがオリオンと共に暮らしていることは、アポロン神に快く思われていなかった。オリオンの性格を乱暴だと思い込んで嫌い、また、純潔を司る守護神・アルテミスに恋愛は許されないとして二人の仲を認めなかったのだ。
しかし、アルテミスはそれに屈しなかった。