「でも。星奈はいくら清楚で美人だからって、告ってくる男を片っ端から振ったりしたら、男に恨まれるよ。怖いよ~、男は。あんた、襲われるかも」

「大丈夫よ、そんなの。テレビドラマか何かだけの世界よ。それより、果代。お茶しない? パフェの美味しいカフェ、見つけたんだ」

「あ、いいねぇ。行こ! 勿論、魔性の女、星奈のおごりで!」

私達はその日も、そんないつも通りのことを話しながら、いつも通りに放課後、寄り道した。
そう。
あんな『非日常』が私を襲うだなんて、その時は予想だにしていなかったのだ。



「じゃあね、星奈。夜道、気をつけて。可愛いあんたは特にね」

「はいはい。また明日ね!」

(あーぁ、すっかり遅くなっちゃった)

カフェで果代とすっかり話し込んでしまったその日。
店を出た時にはあたりは真っ暗で、北の空ではオリオン座が眩いくらいに輝いていた。

(早く帰らないと……)

私の家は北の方角。
オリオン座の輝く方に向かい、足早に歩いた。
そんな私の歩く歩道の横に、一台のワゴン車が停まった。

「おい、姉ちゃん。乗ってけよ。送ってくぜ!」

ワゴン車の窓を開けて、一人の男……金髪で髑髏のネックレスをつけた、いかにもラリった危なさそうなチャラ男が声を掛けてきた。
車の中には、さらに三人の男がワイワイガヤガヤとひしめき合っている。

「いえ、結構です」

そんなの、誰が!
乗る訳ない。

私はそいつを無視して、さらに足を早めて道を急いだ。

しかし……私のそんな態度がそいつらを刺激してしまったらしい。
その車はずっと私の隣につき、早足で歩く私を追って来たのだ。

「おい、姉ちゃーん。俺らと楽しいことしようぜぇ」

車の中からドッと笑いが聞こえてきた。

(ウザい、ウザい。どっか行け!)

私は眉を顰めて走り出した。