正直、彼がこんなにも子供っぽいだなんて思っていなかった。会ったばかりの頃なんて、刺すようなその眼光を見ただけで、厳粛なその声を聞いただけで、怖くて怖くて。身が縮こまりそうだった。

それが今ではこんなに普通に会話して、世話を焼いたりなんてしてしまってる。
本当のオリオンに触れるにつれて……彼に親しみを感じて、愛しくさえ思うようになっていたのだ。

「ねぇ、オリオン」

「ん?」

「あなたって本当に……海の神、ポセイドーンの子なの?」

「ああ。何回もそう言ってるだろう」

「ふーん……」

来たばかりの頃は混乱しまくってて……何言われても真っ白になっていたけれど、今では少し冷静になって彼の言うことを受け止められるようになっていた。

もし彼の話が本当なら、私が今いるのはギリシャ神話の中の世界。そう……小さい頃、お父さんからよく聞かされていた。
ゼウスの王権のもと世界の一部を掌握する、オリンポスの十二の神々。その中の一人……海の神であるポセイドーン。
そして、そのポセイドーンの息子……彼こそが、ギリシャ神話一の狩人であるオリオン。

そんな神話、空想の中だけの話だと思っていた。だけれども……鹿の毛皮一枚だけの彼のこの格好。荒涼とした砂漠の広がる土地。お洒落な服も可愛いスイーツも……街を彩るものが何一つない、この世界。
私が今いるこの世界こそ、まるでその神話の中の世界、そのものなんだ。