「あぁ、今日はお前のおかげだからな。どうだ? 何か欲しいものはあるか?」

「えっ……」

オリオンが上機嫌な様子で尋ねてきて、私は戸惑った。

何だろう……こいつも、お礼をしてくれる気があるのかな?
だけど、欲しいものなんてすぐには思いつかなかった。だって、この世界には着るものも鹿の皮くらいしかないし、美味しいスイーツなんてものもない。だから、お洒落な服だとかケーキだとか、口にしたところでオリオンは首を傾げるだけだろう。

ただ、代わりに私の目に映る彼があの人に重なった。
そう……決して忘れることのできない。大きくて、優しくて、温かい。私のお父さん……。


だから……

「おんぶ!」

その言葉が、私の口をついて自然に出た。

「おんぶだと?」

「そう! あの洞窟まで! 私をおんぶして連れて行って。だって、私……今日一日、釣りばかりしていて疲れちゃって」

「何だ、そんなことか。簡単なことだ」

彼はそう言って大きな背を向けてきて……私は遠慮なく、その背にしがみついた。

「わぁ……温かい」

そう。オリオンの背中は温かくって、優しくて、いい匂い……とっても懐かしい感じがした。