一つ目の肉を骨だけにしたオリオンは、もう一つの骨付き肉に手を伸ばした。

そんな彼の横で、私は……彼に言おうと思っていて、まだ言えていないことを思い出した。
だから私は、彼に聞こえるか聞こえないくらいかの声でそっと囁いた。

「オリオン、ありがとう。守ってくれて。この服も、とても温かい」

しかしオリオンはやっぱり前を向いたままで。
私の囁きが聞こえたのか、聞こえなかったのかも分からなかった。

だけれども、彼はやはり無骨だけれど、さっきまでよりも心無しか柔らかな声で呟いた。

「服……似合ってるぞ」

彼のその言葉に、私の顔はまたしてもカァっと熱くなった。

こんな無骨な服が似合っているなんて不本意なはずなんだけれど……
それに、こんな信じられないような状況で、パニクっているはずなんだけれど。

オリオンの中に見え隠れする、その不器用な優しさが何だか可愛くて、何故だか愛しくさえも思えて。

私は大きな鹿肉を齧りながら、心がポカポカと温かくなって……
肉をガツガツと齧る彼の隣で、自然に顔が綻んでしまったのだった。