「食べろ」

「えっ?」

「腹、減っているんだろ」

オリオンにそう言われて、私の顔はカァっと熱くなって自らのお腹を押さえた。
随分と離れていたのに、私のお腹の虫の音は、彼にも届いていたようだ。

だけれども、彼はそんな私の様子に気付く素振りも見せずに骨付き肉に齧りついていて。
あまりの空腹に抗えない私も、仕方なく、食べたことのないほどに大きな肉を口に運んだ。

「……美味しい」

それは、今まで食べたことのない肉だった。
牛肉より固かったけれど、噛んだ瞬間に口の中にジュワッと肉汁が染み込んで。
その肉汁が舌をとろけさせるかと思うほどに美味しかったのだ。
だけれど、この肉はきっと……。
分かりきっていることだけれど、私は取り敢えず、口に出して尋ねてみた。

「何の肉?」

「鹿だ」

分かりきった疑問を口にする私に、彼はぶっきら棒に前を向いたまま答えた。

「そう……」

勿論、私は鹿の肉なんて、ましてや骨付きのこんなに大きな肉を食べるなんて初めてだった。
だけれども、そのことに今さら、ショックを受けることも感動する余裕もなくて。
私は彼の言うことと、今のこの現状をそのままに受け入れた。