それまでは極度の緊張で気付かなかったのだけれど……確かに、その洞窟は寒かった。

あれからかなりの時間が経っていて夜になったということなのか、急に冷え込んできて。

毛皮をくるんで身体を隠しているだけの私は、途端にガタガタと震え出した。

「ちょっと!」

その寒さに耐えきれず、オリオンの大きな背中に叫ぶと彼は無言で振り向いた。

「やっぱり、着る。だから……向こう向いてて」

我儘で感じ悪い……自分でも、自らをそう思う。
だけれど、オリオンはそんな私を一切咎めようとせずに、何も言わずに毛皮の服を差し出して、向こうで火を焚き始めた。



(温かい……)

シカの毛皮の服……当然ながら、そんなのを着たのは初めてだった。
だけれども、生きて血の通ったものの体温が伝わってくるようで。
体の震えも治まって、私の心も何だか温かくなったような気がした。


すると、オリオンが火を焚いている向こうから、肉が焼けるような香ばしい匂いが漂って来た。
途端に、私のお腹がグーッと鳴った。
考えてみたら、もう何時間も何も食べてなくて……安心した途端に、堪えられないような空腹が襲ってきたのだ。

私は恐る恐る歩を進めて、焚火の傍のオリオンの隣にちょこんと腰掛けた。
すると彼は、何の躊躇もなく、焼けた肉のついた骨を私に渡した。