「ねぇ、オリオン。この世界にも……もう、慣れた?」

見た目だけでいえば、この世界にもだいぶ馴染んできて……だけれどもまだ何処か違和感のある彼に、私は恐る恐る尋ねた。

「慣れるわけがないだろう。今日も、コウジゲンバのオヤカタって奴と取っ組み合いの喧嘩をしたぞ」

「うわぁ……もしや、やめさせられた?」

不安気に尋ねる私に、彼は首を振った。

「いいや。喧嘩の後、オヤカタはカッカッカと思い切り笑い出してな。『お前みたいに骨のある奴は初めてだ。近頃の若い者はみんな、軟弱でな……これからも、現場をよろしく頼むぞ』なんて言っていた」

「そ……そうなんだ」

どうやら、彼は彼なりにこの世界に馴染んでいる部分もある……らしい。



「それにな。この世界に慣れることができなくても……セナ。俺はお前の近くにいれれば幸せなんだ」

「えっ……」

時折、オリオンが口にする真っ直ぐで飾らない気持ち……それは、私の胸をドクンと叩いて、ときめかせる。
だから私も、カァッと火照る顔でにっこりと彼に微笑んだ。

「ええ、私も……これからも、ずっと一緒だよ! オリオン」

ほんのりと頬を桃色に染めたオリオンの手を引いて……その温もりを感じながら。

太陽の沈みかけの冬の夕方。東の空に薄っすらと輝きかけているオリオン座の下、私達は普通の恋人同士のように、静かな街を楽しく歩いていたのだった。