「ここが、隠れ家?」

それは大きな岩の丘にあいた洞窟で。

その奥はまるで、飲み込まれそうなほどに暗かった。

「あぁ。ここには獣は来ることはない。少しは安心できるだろう」


オリオンはそう言うなり、二つの火打ち石をカチカチとぶつけて、まるで慣れた手付きで松明を起こした。

私はそんな火の起こし方に目を見張ったけれども、彼はまるで当たり前のように松明で洞窟の中を明るく照らし、中をずいずいと進んで行った。

他に頼る者のない私は、見るからに無骨な格好のオリオンに遅れを取らないように、急ぎながらも恐る恐る足を踏み入れた。



その洞窟の中の空気は透明で、冷んやりと心地良くて。

そしてそれは、何だか私達を守ってくれているような気がして……私の心のざわつきは収まった。

オリオンっていう、全く知らないはずのその男に付いて行った私は、どういうわけか、この全く知らない世界でようやく安心することができたのだ。



「これは……毛皮?」

松明に照らされた洞窟の中には、分厚い毛皮が三枚、大きな岩に掛けて干されていた。

「ああ、鹿のな」

「鹿……」

言われてみると、その模様は鹿のもののようだった。



「座りな、その辺に」

「えっ、うん……」

ぼんやりと鹿の毛皮を見る私に、オリオンは腰掛けサイズの岩に座るよう促して、自身も大きめの岩に腰掛けた。

そして彼は、鋭く尖った石器のようなものを取り出して、毛皮を一枚、器用に切り始めた。