「ジーナ、俺たち同い年なんだからそんな丁寧にしなくていいよ。俺のことも名前でいいし……」

「いえ、あたしがこの世界で生きていくための決まりですから」

困ったような笑顔を見せるハルトさんに、あたしはそう言い歩き出す。

「あたしの名前だって、呼ばなくていいんです」

「君は人間じゃないか。なぜ名前を呼んではいけないの?」

目の前の全てがぼやけて、溶けてしまった。あたしはこぼれそうになるものを必死に堪え、「規則ですから!」と言いハルトさんから離れる。

ハルトさんからしばらく離れた場所で、あたしの瞳から涙がこぼれた。

訓練所へと向かうと、みんながハルトさんを取り囲んでいた。ハルトさんの歓迎会をするらしい。あたしに声がかからないことは知っている。あたしは射撃練習で使う銃の手入れを始めた。

「オススメのお店があるの!そこで飲みましょうよ!」

「そこのお店の店員、めちゃくちゃ美人なんだ!」

男女関係なく好かれる、とても羨ましい。あたしとは真逆だ。