あたしのことは、特殊警察官ならば全員が知っているはず。あたしは不思議に思い、訊ねてみた。

「あの、あなたは私のことを……」

「知ってるよ。ジーナって言うんでしょ?素敵な名前だよね」

男性はニコリと笑って言った。あたしの胸がトクンと優しい音を立てる。あたしの名前を呼んでくれる人は、いなかった。

「俺、ハルト・フリードリヒ。ジーナとは同い年だよ。今までは潜入捜査の部署にいたけど、ここに異動願いを出したんだ。これからよろしく」

ハルト……さんは、あたしに右手を差し出す。あたしは、それを恐る恐る握った。

あたしの名前を呼んでくれた不思議な人。あたしは、これから始まることに怯えているの。

いつか、お別れが来てしまうことに……。