「セピアくん、お待たせ」
先に今日の作業を終えたセピアが、店内のソファで待ってくれていた。近くにある暖炉の火がぱちぱちと爆ぜている。
私が声をかけると、セピアは本に落としていた目線を上げて微笑んでくれた。
「ケイト。お疲れさま」
「ごめんね、最後のお客さまの接客が長引いちゃって」
「全然大丈夫だよ。夕食をとるのにちょうどいい時間だし。じゃ、行こっか」
セピアは立ち上がると、私の腕を組むように絡めた。
「ちょ、ちょっとそれは」
身じろぎして離れようとすると、セピアがぎゅっと私の腕を押さえつけた。
「なんで? 男がエスコートするのは当然でしょ?」
セピアがきょとんとした顔で見つめてくる。
この世界では、これが普通なのかもしれない。だったらここはセピアに任せておいたほうがいいのかも。
「そっか……わかった」
私が頷いて身を任せると、セピアは満足そうな顔で微笑んでくれた。
連れ添って外に出ると、すでに日はとっぷりと暮れていた。石畳の上にオレンジ色の街灯が頼りなげな灯りを落としている。
そういえば、この世界に来てから夜に出歩くのは初めてだった。電気がないからもとの世界より暗いし、セピアがいなかったら心細くてひとりでは歩けなかっただろう。
「アッシュさんは、私を置いてすたすた歩いていっちゃったから、そういう文化を知らなかったよ」
歩きながらそう話すと、セピアは白い息をふぅっと吐きだした。
「アッシュは特殊だから。普通はレディにエスコートなしで夜道を歩かせたりしないよ」
「あのときは昼間だったけど……」
「僕だったら昼間だとしても、ケイトのことはしっかりエスコートしていたと思うよ」
「そっか。ありがとう」
外套越しに組んだ腕から伝わってくる、セピアの体温が心地いい。上質な生地が触れ合う感触も。
背の高い石造りの建物の背景に浮かぶ、紺色のヴェールとたくさんの瞬く星。ちいさな、木枠の窓からこぼれるランプの光。
先に今日の作業を終えたセピアが、店内のソファで待ってくれていた。近くにある暖炉の火がぱちぱちと爆ぜている。
私が声をかけると、セピアは本に落としていた目線を上げて微笑んでくれた。
「ケイト。お疲れさま」
「ごめんね、最後のお客さまの接客が長引いちゃって」
「全然大丈夫だよ。夕食をとるのにちょうどいい時間だし。じゃ、行こっか」
セピアは立ち上がると、私の腕を組むように絡めた。
「ちょ、ちょっとそれは」
身じろぎして離れようとすると、セピアがぎゅっと私の腕を押さえつけた。
「なんで? 男がエスコートするのは当然でしょ?」
セピアがきょとんとした顔で見つめてくる。
この世界では、これが普通なのかもしれない。だったらここはセピアに任せておいたほうがいいのかも。
「そっか……わかった」
私が頷いて身を任せると、セピアは満足そうな顔で微笑んでくれた。
連れ添って外に出ると、すでに日はとっぷりと暮れていた。石畳の上にオレンジ色の街灯が頼りなげな灯りを落としている。
そういえば、この世界に来てから夜に出歩くのは初めてだった。電気がないからもとの世界より暗いし、セピアがいなかったら心細くてひとりでは歩けなかっただろう。
「アッシュさんは、私を置いてすたすた歩いていっちゃったから、そういう文化を知らなかったよ」
歩きながらそう話すと、セピアは白い息をふぅっと吐きだした。
「アッシュは特殊だから。普通はレディにエスコートなしで夜道を歩かせたりしないよ」
「あのときは昼間だったけど……」
「僕だったら昼間だとしても、ケイトのことはしっかりエスコートしていたと思うよ」
「そっか。ありがとう」
外套越しに組んだ腕から伝わってくる、セピアの体温が心地いい。上質な生地が触れ合う感触も。
背の高い石造りの建物の背景に浮かぶ、紺色のヴェールとたくさんの瞬く星。ちいさな、木枠の窓からこぼれるランプの光。



