「さすがあの方はソツがないわね。……そう何度も断れなそう」
手の甲を押さえたまま立ち尽くす私の肩を、クラレットが叩く。いつものクラレットとは違う、なぐさめるような触り方だった。
「断れなくなったら、素直に食事に行ったほうがいい?」
嘘の言い訳をして、彼を何度も納得させる自信はなかった。
「それは……。なるべく避けたいわね」
「やっぱり、階級が違うから問題なの?」
「それもあるけれど……。ケイトが心配だからよ」
クラレットは言い淀み、ほぅ、と息を吐きながらつぶやいた。重たいため息には、困惑と同情が混ざっている。
「心配?」
「ウォルさまは確かにいいお客さまよ。でも、甘く見てはダメ。あまり近付きすぎないようにしなさい。お店の中なら私がフォローに入れるからいいけれど、外で二人きりになるのは心配だわ」
「な、なんだか猛獣みたいな言い方するんだね」
「そうよ。あの方に比べたらアッシュもセピアもかわいい子犬みたいなものよ。ぱくっと丸呑みにされても文句言えないんだから」
クラレットはそう言うけれど、「他のお客さんと同じように、普通に接して欲しい」というウォルに、含みがありそうには見えなかった。単純に友人を作りたいだけだと感じたのだが、私が彼を甘く見ているだけなのだろうか。
「そんなに悪い人には思えないんだけどなあ……」
ウォルが去って行った方向を見ながら、ぽそっとつぶやく。あの無感情な眼差しだけは、どうも苦手だけど。
いつも気が付くと消えている彼の姿は、窓から見る景色のどこにも残っていなかった。
手の甲を押さえたまま立ち尽くす私の肩を、クラレットが叩く。いつものクラレットとは違う、なぐさめるような触り方だった。
「断れなくなったら、素直に食事に行ったほうがいい?」
嘘の言い訳をして、彼を何度も納得させる自信はなかった。
「それは……。なるべく避けたいわね」
「やっぱり、階級が違うから問題なの?」
「それもあるけれど……。ケイトが心配だからよ」
クラレットは言い淀み、ほぅ、と息を吐きながらつぶやいた。重たいため息には、困惑と同情が混ざっている。
「心配?」
「ウォルさまは確かにいいお客さまよ。でも、甘く見てはダメ。あまり近付きすぎないようにしなさい。お店の中なら私がフォローに入れるからいいけれど、外で二人きりになるのは心配だわ」
「な、なんだか猛獣みたいな言い方するんだね」
「そうよ。あの方に比べたらアッシュもセピアもかわいい子犬みたいなものよ。ぱくっと丸呑みにされても文句言えないんだから」
クラレットはそう言うけれど、「他のお客さんと同じように、普通に接して欲しい」というウォルに、含みがありそうには見えなかった。単純に友人を作りたいだけだと感じたのだが、私が彼を甘く見ているだけなのだろうか。
「そんなに悪い人には思えないんだけどなあ……」
ウォルが去って行った方向を見ながら、ぽそっとつぶやく。あの無感情な眼差しだけは、どうも苦手だけど。
いつも気が付くと消えている彼の姿は、窓から見る景色のどこにも残っていなかった。



