ポンコツ女子、異世界でのんびり仕立屋はじめます

「あとはデザインについてなのですが、華やかなものが好きなら羽をつけたり、形をハートにしたり……。あとはチェーンを足して長さを出したりもできますよ。こう、揺れる感じで」

「デザインは全面的にケイトに任せるよ。私より女性の好みはよくわかっているだろうし」

「わかりました。では、デザインの参考にしたいので、その方の髪の色や目の色、普段よく着ているドレスについて教えてもらっていいですか?」

「ああ――」

 ウォルが女性の特徴について教えてくれる。ブルネット、緑色の目、はっきりした濃い色の豪華なドレスを好んで着ている……。

 なんとなくだが、女王様のような気の強い、はっきりした顔立ちの女性像が見えてくる。

「こんな感じでいいかな?」

「じゅうぶんです。ありがとうございます」

 書きつけていた羊皮紙と羽ペンを、テーブルに置く。

「じゃあ、材料は後日届けるよ。報酬は受け取るときで構わないかい?」

「はい。練習もしたいので、樹脂は多めに用意してくださると助かります。でも報酬って……いいんですか? 私は素人で、お金をとれるレベルじゃないのに」

「いや、労働に対する正当な対価なのだから受け取って欲しい。それに嘘でも『高いものだった』と言ったほうが彼女は喜ぶだろうしね」

 確かに、百円均一のアクセサリーとブランドのアクセサリーでは女性の気持ちは全く変わってくる。

「そういうことなら……。ありがたく受け取らせていただきます」

「うん、そうしてくれるかな。じゃあ、私はそろそろ帰るよ」

 立ち上がったウォルのあとを追って、扉まで見送る。

「なんだかすみません。相談だったのに、お仕事をいただくような形になってしまって」

「そう思ってくれるなら、次こそは食事に付き合ってくれると嬉しいんだけど」

「え、ええと……。しばらくは仕事がとても忙しいので、どうなるかちょっとわからなくて……」

 外套を着せながらしどろもどろに言い訳すると、至近距離でくるりと振り向かれた。

「――年末だから、だよね?」

 じっと見つめられて、体温が下がってしまう。微笑んでいるのに瞳だけ感情がないみたいでこわい。言い訳が嘘なのもすべて、見透かされているような気持ちになる。

「はあ、まあ、そうですね……」

「じゃあ、年明けにまた誘ってみるよ。じゃあ、今日はこれで」

 ウォルは去り際に私の手にキスをすると、颯爽とお店を出て行ってしまった。

 さりげなさすぎて何も抵抗できなかったし、あっという間すぎて反応もできなかった。