ポンコツ女子、異世界でのんびり仕立屋はじめます

「あの、それで、話って……」

 胃がぎゅうっと痛くなりながらも、自分から切り出した。待っている時間は少ないほうがショックが少ない。あらゆるパターンを予想して身構えていたのだけど……。

「ああ。ケイトの、もとの世界での仕事のことが聞きたい」

 アッシュから返ってきたのは思ってもみなかった台詞だった。

「えっ、私の? どうしてですか?」

「君のこの一か月の働きぶりを見ていて、そちらの世界での仕立て屋に興味がわいた。オーナーとして、見習うべきところは取り入れていきたいと思っている」

「なるほど……。そういうことなら、喜んで」

 私も同じように、この一か月で三兄弟の働きぶりを見ていた。いちばん近くで見ていたクラレットは言わずもがな、一見自由人に見えるセピアも仕事に関しては職人肌で、妥協を許さなかった。

 アッシュは意外と周りを見ていて、お客さまのことも従業員のことも、細かいところまで把握してくれている。ほとんどお店には出てこないと言っていたが、デザインを決めるときには必ずお客さまと顔を合わせていた。「顔も知らない相手にドレスを任せられないだろう」というのが持論だった。

 冷たいだけじゃない。それがわかっているから、作り手のアッシュも、この店のドレスも愛されるのだろう。

「じゃあまず、向こうの世界でのドレスの販売形態だが――」

 アッシュの質問に応じて、たくさんのことを話した。オーダーメイドではなくたくさんの既製品の中から選んで買う、ということには特に驚いていた。

 私の仕事のこと、どんなお店で働いていたかということも、アッシュは聞きたがった。

「一般的な婦人服のお店ですよ。ショッピングモールにあって……」

 向こうの世界での一般的なことならいくらでも話せた。でも、自分の仕事のことはあまり話したくなかった。アッシュに話して、私の未熟さを見破られてしまうのがこわかった。