ポンコツ女子、異世界でのんびり仕立屋はじめます

 * * *

 気が付くと、ピンク色のもやがかかった世界を彷徨さまよっていた。いつかこの光景を見た気がするのだけど、頭がぼんやりして思い出せない。

 道もないし、壁もない。足元はふわふわするけれど、かろうじて床があるのはわかる。外なのか、屋内なのかわからない世界を、ただ甘い匂いのする方向へ進んでいく。

 甘い匂いが強くなってきたとき、やたら露出度の高いドレスを着たクラレットに出会った。

「あら、ケイトじゃない」

「クラレット、こんなところでどうしたの?」

「さあ、どうしたのかしら」

 なんだか会話がおかしい。口元だけで無理やり作ったようなクラレットの笑みも、ぎらついている紫色の瞳も、いつもと違う。

「私、行かなくちゃ」

 にじり寄ってくるクラレットに恐怖を感じて引き返すと、手首をつかまれた。

「ちょっと待って。もう少し遊びましょうよ」

「遊ぶって言ったって……」

 振り返ると、クラレットがふたりになっていた。女装姿と、男装姿。男装のほうは、トラウザーズをはいただけで半裸だった。

「なんで? どうしてクラレットがふたりいるの?」

「ねえケイト。あなたはどっちの私が好きなの?」

 ふたりのクラレットの声が重なる。変なエコーがかかって、耳がおかしくなりそうだ。

「どっちって。どっちのクラレットも同じじゃない」

「だからそうじゃなくて。こういうことをされるなら、どっちの姿がいいのって聞いてるの」

 男装したクラレットに押し倒された。床に倒れたはずなのに、感触がベッドみたいだ。

「ちょっと、何する……っ」

 もがいてもびくともしない。身体に力が入らないせいもあるけれど、クラレットの力が思ったよりも男性のものだったから。

「答えないなら、両方味わってもらうわよ」

 女装姿のクラレットが、私の手をとってぺろりと舐めた。

「ひっ……! 変なことやめてよ!」

 その舐め方があまりにも官能的だったから、身体ごとびくっと反応してしまう。