「ごめん、冗談よ。ケイトには感謝している。……本当よ」
「……うん」
真剣な瞳で見つめられて、なぜかドキドキしてしまった。今のクラレットは女の姿なのに。まさか、男はこりごりすぎて「そっち」の扉を開いてしまったのだろうか。いやいや、さすがにそれはクラレットにも失礼だろう。
「ねえ、あの。さすがに見つめすぎじゃない?」
「……悪くないわ」
「え?」
クラレットが身を乗り出してきた。手袋を外した手をぎゅっと握られる。
「この姿のケイトだったら、私、いけるかも」
「ええっ?」
クラレットから甘い匂いがする。以前セピアとアッシュからも感じた匂いと、同じ――。
「ねえ、どこまでできるか試してみない?」
「ちょ、ちょっと待って。試すって何を」
「わかってるくせに」
私の上に覆いかぶさろうとしてくるクラレットから逃げ出したいのに、頭がくらくらして身体がしびれてくる。
今のクラレットは、私のことを女として「いける」と思っているのだろうか。それとも男として「いける」と思っているのだろうか。
「どっちでも、駄目……っ!」
渾身の力で押し返したら、クラレットが笑いをこらえる表情をしていた。
「顔が必死すぎるわよ……」
「ちょっと! からかうにしても限度があるでしょ!」
「いくらなんでも、馬車の中で襲いかかるわけないじゃない。私は紳士であり淑女なんだから。だまされるほうが悪いのよ」
「このっ……性悪オネエ!」
「なによオネエって? ……痛っ!」
もっと怒ってやろうかと思ったが、今日のクラレットに免じてデコピンで許してあげることにした。私はなんだかんだ、この「性悪オネエ」に親しみを感じているらしい。
「ちょっと! 赤くなったらどうしてくれるのよ!」
「知らない。やられるほうが悪いのよ」
クラレットの言葉を借りて言い返す。なんだかおかしくなって、ふたり同時に吹き出していた。
さっき感じた甘い匂いは、残り香をつかむ前に消えてしまっていた。
「……うん」
真剣な瞳で見つめられて、なぜかドキドキしてしまった。今のクラレットは女の姿なのに。まさか、男はこりごりすぎて「そっち」の扉を開いてしまったのだろうか。いやいや、さすがにそれはクラレットにも失礼だろう。
「ねえ、あの。さすがに見つめすぎじゃない?」
「……悪くないわ」
「え?」
クラレットが身を乗り出してきた。手袋を外した手をぎゅっと握られる。
「この姿のケイトだったら、私、いけるかも」
「ええっ?」
クラレットから甘い匂いがする。以前セピアとアッシュからも感じた匂いと、同じ――。
「ねえ、どこまでできるか試してみない?」
「ちょ、ちょっと待って。試すって何を」
「わかってるくせに」
私の上に覆いかぶさろうとしてくるクラレットから逃げ出したいのに、頭がくらくらして身体がしびれてくる。
今のクラレットは、私のことを女として「いける」と思っているのだろうか。それとも男として「いける」と思っているのだろうか。
「どっちでも、駄目……っ!」
渾身の力で押し返したら、クラレットが笑いをこらえる表情をしていた。
「顔が必死すぎるわよ……」
「ちょっと! からかうにしても限度があるでしょ!」
「いくらなんでも、馬車の中で襲いかかるわけないじゃない。私は紳士であり淑女なんだから。だまされるほうが悪いのよ」
「このっ……性悪オネエ!」
「なによオネエって? ……痛っ!」
もっと怒ってやろうかと思ったが、今日のクラレットに免じてデコピンで許してあげることにした。私はなんだかんだ、この「性悪オネエ」に親しみを感じているらしい。
「ちょっと! 赤くなったらどうしてくれるのよ!」
「知らない。やられるほうが悪いのよ」
クラレットの言葉を借りて言い返す。なんだかおかしくなって、ふたり同時に吹き出していた。
さっき感じた甘い匂いは、残り香をつかむ前に消えてしまっていた。



