「ここ……、衣装部屋じゃない」
開けた先は、従者やメイドが着替える衣裳部屋だった。鏡台と姿見がいくつか、晩餐会用と普段用の衣装がずらっと並んでいる。
「うん。エリザベスさまに頼んで貸してもらったの」
「なんでそんなこと……。ねえ、さっきの黒服、逢引きに使うと思ってなかった!?」
「事情を説明できなかったから、そういうことになってるの」
「冗談じゃないわよ! しかも私、直前で怖気づいた男だと思われたじゃない!」
さっきの構図は完全にそうだったなあ、と思う。でもクラレットはまだいい。私なんて、怖気づいた男をむりやり引っ張っていくやる気のある女だと思われたのだから。
「ごめん。エリザベスさまは事情をわかっているから、安心して」
「事情って――」
従者の人に頼んでおいたドレスの箱が、テーブルの上に載っている。
「な、何それ。勝手に開けていいの?」
「いいの。私たちのドレスだから」
「……どういうこと」
いぶかしむクラレットの前で、ドレスをばさっと広げた。
「これって――」
首もとと肩をさりげなく隠した、真紅のドレス。私の着ている『千枚の葉』と対になるかのように、こちらのドレスは金の糸で裾に模様が描かれている。裾の広がりを抑えたデザインが色っぽい。
「そう、クラレットのドレスだよ。アッシュさん、ちゃんと用意してくれていたんだね。クラレットに着せてやってくれって」
これは、クラレットのスタイルを惹き立てるためのドレスだ。色も、形も、模様さえもクラレットに映えるように計算し尽くされている。
「テーマは『秘めた緋色』だって。アッシュさんはクラレットのこと、誰よりも理解しているんだね。このドレスを見たらわかるよ」
そしてこのテーマもきっと、クラレットの恋を指しているのだろう。
早く着たところが見てみたくてうずうずしているのに、クラレットは自分の腕を抱くようにして唇をかんだ。
開けた先は、従者やメイドが着替える衣裳部屋だった。鏡台と姿見がいくつか、晩餐会用と普段用の衣装がずらっと並んでいる。
「うん。エリザベスさまに頼んで貸してもらったの」
「なんでそんなこと……。ねえ、さっきの黒服、逢引きに使うと思ってなかった!?」
「事情を説明できなかったから、そういうことになってるの」
「冗談じゃないわよ! しかも私、直前で怖気づいた男だと思われたじゃない!」
さっきの構図は完全にそうだったなあ、と思う。でもクラレットはまだいい。私なんて、怖気づいた男をむりやり引っ張っていくやる気のある女だと思われたのだから。
「ごめん。エリザベスさまは事情をわかっているから、安心して」
「事情って――」
従者の人に頼んでおいたドレスの箱が、テーブルの上に載っている。
「な、何それ。勝手に開けていいの?」
「いいの。私たちのドレスだから」
「……どういうこと」
いぶかしむクラレットの前で、ドレスをばさっと広げた。
「これって――」
首もとと肩をさりげなく隠した、真紅のドレス。私の着ている『千枚の葉』と対になるかのように、こちらのドレスは金の糸で裾に模様が描かれている。裾の広がりを抑えたデザインが色っぽい。
「そう、クラレットのドレスだよ。アッシュさん、ちゃんと用意してくれていたんだね。クラレットに着せてやってくれって」
これは、クラレットのスタイルを惹き立てるためのドレスだ。色も、形も、模様さえもクラレットに映えるように計算し尽くされている。
「テーマは『秘めた緋色』だって。アッシュさんはクラレットのこと、誰よりも理解しているんだね。このドレスを見たらわかるよ」
そしてこのテーマもきっと、クラレットの恋を指しているのだろう。
早く着たところが見てみたくてうずうずしているのに、クラレットは自分の腕を抱くようにして唇をかんだ。



