「羽が縫い付けられたドレスなんて、はじめて。きっとみんなの注目の的よ。ありがとう、ケイトがアイディアを出してくれたんでしょう? このアクセサリーも」

 エリザベスさまの胸元と耳に光るのは、クラレットと一緒にアレンジしたネックレスとイヤリングだ。シンプルだったパールのイヤリングには羽と小さなダイヤをつけて長さを出し、パールのネックレスにはさびしい箇所に羽を加えた。

「私は本当に、思いついたことを言っただけで……。実際に形にしてくれたのはアッシュさんとクラレットなので」

「あなたも手伝ったでしょう。そういうときは謙遜しなくていいの」

 手を振りながら否定すると、クラレットが肘で軽くつつきながら耳打ちしてきた。

「本当に、綺麗だわ……。ありがとう、ふたりとも」

 愛らしいけれど幼くも見えてしまうエリザベスさまが、純真無垢な妖精のように見える。

 その人の魅力を惹き立てるって、こういうことだったんだ。ないものをあるように見せるのではなく、その人の美しい部分が強調されるということ。アッシュの言っていたことが、やっと実感を伴って理解できた。

「来週、お屋敷で晩餐会があるの。実は婚約者をお披露目することになっていて……」

「えっ、そうなんですか? おめでとうございます!」

 晩餐会用のドレスとは聞いていたが、婚約者がいることははじめて知った。

「ありがとう」

 少し照れたように微笑むエリザベスさまは幸せそうで、本来は恋愛ってこういう幸せなものよね……という複雑な気持ちになる。失恋や嫉妬や執着や、すれた感情に触れることが多すぎて、こんな当たり前の初々しい気持ちを忘れてしまった。