その場でくるりと回ってみる。スカートにボリュームがあるから物を引っかけないように注意しなければいけないが、思ったほど動きづらくはなかった。ほとんど締め付け感がないからかもしれない。

「ありがとうございます。まるで自分が本当に可愛い女の子になったみたい」

 さっきの笑顔は幻だったのだろうか、と思うくらいすぐに仏頂面に戻ってしまったアッシュにお礼を言う。

「俺のドレスは、着た人の魅力を惹き立てるように作ってある」

「はい。だから私でも女の子らしく見えるんですよね?」

 アッシュが少しむっとした顔になった。

「君はわかっていないようだな。ないものをあるように見せるのではなく、その人の美しい部分が強調されるということだ。君が女性らしく、愛らしく見えるということは、それは君がもともと持っていたものだということだ、ケイト」

 胸の奥がじんわりあたたかくなるのを感じた。こんなに感動したのに、アッシュは言うだけ言ってさっさとお茶の続きに戻ろうとしている。

「そ、それは、褒めてくれているんですか……?」

 アッシュの後姿におそるおそる問いかけた。肩がぴくりと動いて、足が止まる。

「違う。君にドレスについて誤解されたくなかっただけだ」

 振り返らないまま、いつも以上にぴしゃりとした声でアッシュが言う。またあの甘い匂いが漂ってきたのを感じながら、この人の冷たい態度は照れ隠しなのではと気付き始めている自分がいた。