「あ、あの、アッシュさん……?」
「ケイト。さっきは仕方なかったが、ウォルさまがいるときには裏に下がっていろ」
「えっ、どうしてですか?」
「……失礼があったらまずい相手だからだ」
「あら、でもウォルさまはケイトを気に入っていらしたわよ? 今度来たときにいなかったら、追及されるんじゃないかしら」
クラレットの言葉に、アッシュが沈黙する。何かを必死で考えているような表情だった。
「そんなに心配しなくても大丈夫よ。私がちゃんとケイトを教育するし、何かあったらフォローに回るから」
「……そうだな。今言ったことは忘れてくれ」
「それより聞いてちょうだい、エリザベスさまのアクセサリーのことなんだけど――」
クラレットがアッシュに報告をしている間に、テーブルの上を片付けることにする。ウォルが使ったティーカップやミルクピッチャーをトレイに載せていると、セピアが店の奥から出てきた。
「あ、二人ともおかえり。出かけている間に役場の人が来たよ。ケイトの住居についてだって」
「ほんと? どうだった?」
前のめりになりながら訊ねたのだが、セピアが申し訳なさそうな顔で口ごもる。
「うん、それがね……。女性が一人で住めるような物件は見つからなかったんだって」
「えっ……」
一瞬で目の前が真っ暗になった。
住む場所がなかったら、ホームレスになってしまう。異世界で野宿? いやいや、それはさすがに惨めすぎる。
「あら、じゃあホテル住まい? 女が泊まれる安宿を探すしかないかしら」
「でも、それじゃあお金がたまらないんじゃないの? 一時的にならいいけどさ」
「そうだよね……。どうしよう……」
働き口は見つかったのに住む場所がないなんて。もとの世界に帰りたい。せまいワンルームのアパートが恋しい。家の鍵は持っているのに帰れない、帰り道もわからない。
やっとホームシックが襲ってきて、目に涙がにじんできた。
「ケイト。さっきは仕方なかったが、ウォルさまがいるときには裏に下がっていろ」
「えっ、どうしてですか?」
「……失礼があったらまずい相手だからだ」
「あら、でもウォルさまはケイトを気に入っていらしたわよ? 今度来たときにいなかったら、追及されるんじゃないかしら」
クラレットの言葉に、アッシュが沈黙する。何かを必死で考えているような表情だった。
「そんなに心配しなくても大丈夫よ。私がちゃんとケイトを教育するし、何かあったらフォローに回るから」
「……そうだな。今言ったことは忘れてくれ」
「それより聞いてちょうだい、エリザベスさまのアクセサリーのことなんだけど――」
クラレットがアッシュに報告をしている間に、テーブルの上を片付けることにする。ウォルが使ったティーカップやミルクピッチャーをトレイに載せていると、セピアが店の奥から出てきた。
「あ、二人ともおかえり。出かけている間に役場の人が来たよ。ケイトの住居についてだって」
「ほんと? どうだった?」
前のめりになりながら訊ねたのだが、セピアが申し訳なさそうな顔で口ごもる。
「うん、それがね……。女性が一人で住めるような物件は見つからなかったんだって」
「えっ……」
一瞬で目の前が真っ暗になった。
住む場所がなかったら、ホームレスになってしまう。異世界で野宿? いやいや、それはさすがに惨めすぎる。
「あら、じゃあホテル住まい? 女が泊まれる安宿を探すしかないかしら」
「でも、それじゃあお金がたまらないんじゃないの? 一時的にならいいけどさ」
「そうだよね……。どうしよう……」
働き口は見つかったのに住む場所がないなんて。もとの世界に帰りたい。せまいワンルームのアパートが恋しい。家の鍵は持っているのに帰れない、帰り道もわからない。
やっとホームシックが襲ってきて、目に涙がにじんできた。



