「ちょっとアッシュ! さっきのはどういうことよ! この子を雇うって、本気なの?」

 エリザベスさまが上機嫌で帰った瞬間、クラレットがアッシュに掴みかかった。

「アッシュが女性に親切にするなんてありえない。商売以外では、常にブリザードみたいな冷気を出しているのに! ケイトは僕が口説いていたところなんだから、邪魔しないでよね」

 セピアはセピアで問い詰めていたが、驚く箇所はそこなのだろうか。

「親切にしたわけじゃない。うちの店の利益を考えたまでだ」

「この子がなんの利益を生むって言うのよ!」

「さっきの光景を見ただろう。ケイトはクラレットには分からない微妙な色の違いまで見分けていた」

「それは……」

 クラレットがぐっと言葉に詰まる。

「色の違い……?」

 さっきクラレットは、水色の布をたくさん持ってきていた。ひとつひとつに番号が振ってあったのは分かったが、もしかして……。

「クラレットは色弱なんだ。同じような色味でわずかな違いだと、見分けることができない」

「ちょっと、色弱って言わないで! 私は普通よ。男のほうが女より色を感じる能力が低いから仕方ないのよ」

「え、男って」

 クラレットは拗ねたような顔で腕を組んでいる。まさか。