「アッシュが? あなたを助けたですって?」
「本当に? 人違いじゃなくて?」
なぜそんなに驚くのかと私のほうが戸惑った、そのとき……。
がらんがらん。張りつめた空気を壊すように、ドアベルが軽快な音を立てた。
「ごめんください」
「あら、エリザベスさま! いらっしゃいませ!」
華やかなドレスに帽子をかぶった楚々とした女性が顔を覗かせると、クラレットは表情と声のトーンを変えた。自分もいつもやっていたことではあるが、彼女の変わりようはもはや女優である。
「セピア、あなたはここでこの子の相手をしてて」
「わかった」
向かいに座っていたクラレットが行ってしまい、隣に座ったセピアと残された。初対面の美少年とふたりきりだと思うと落ち着かない。
「とりあえずさ、アッシュが帰ってくるまでお茶でも飲みながらおしゃべりしようか。僕、君の話いろいろ聞きたいな」
「アッシュさん、留守なんですか?」
少しほっとしてしまった。ただでさえ微妙な雰囲気なのに、帰ってきたアッシュに冷たい態度をとられたら心が折れてしまいそうだ。
「うん。どっちみち、お店のことはアッシュがいないと決められないし。ささ、冷めないうちにお茶でもどうぞ」
「あ、ありがとう……」
この世界に来てから、何かを口にするのははじめてだ。カップを口に運ぶと、薫り高いルビー色の液体が、お腹をあたたかさで満たしてくれた。
「……おいしい」
紅茶の味が、もとの世界とあまりにも変わらなくて、安心して涙ぐんでしまった。
「本当に? 人違いじゃなくて?」
なぜそんなに驚くのかと私のほうが戸惑った、そのとき……。
がらんがらん。張りつめた空気を壊すように、ドアベルが軽快な音を立てた。
「ごめんください」
「あら、エリザベスさま! いらっしゃいませ!」
華やかなドレスに帽子をかぶった楚々とした女性が顔を覗かせると、クラレットは表情と声のトーンを変えた。自分もいつもやっていたことではあるが、彼女の変わりようはもはや女優である。
「セピア、あなたはここでこの子の相手をしてて」
「わかった」
向かいに座っていたクラレットが行ってしまい、隣に座ったセピアと残された。初対面の美少年とふたりきりだと思うと落ち着かない。
「とりあえずさ、アッシュが帰ってくるまでお茶でも飲みながらおしゃべりしようか。僕、君の話いろいろ聞きたいな」
「アッシュさん、留守なんですか?」
少しほっとしてしまった。ただでさえ微妙な雰囲気なのに、帰ってきたアッシュに冷たい態度をとられたら心が折れてしまいそうだ。
「うん。どっちみち、お店のことはアッシュがいないと決められないし。ささ、冷めないうちにお茶でもどうぞ」
「あ、ありがとう……」
この世界に来てから、何かを口にするのははじめてだ。カップを口に運ぶと、薫り高いルビー色の液体が、お腹をあたたかさで満たしてくれた。
「……おいしい」
紅茶の味が、もとの世界とあまりにも変わらなくて、安心して涙ぐんでしまった。



