むかしむかし、小さいころ。おばあちゃんの経営するブティックは、私の遊び場だった。

 お姫さまみたいなロングスカートやワンピース。シルクのブラウスに、レースたっぷりのコサージュ。きらきら光るアクセサリーと、外の世界を夢見る靴たち。

 新しいお洋服を手にしたお客さまたちはみんな笑顔で帰り、そんな場所の主であるおばあちゃんは、シンデレラの魔法使いみたいだと思っていた。

 私も大きくなったら、自分だけのお店を作るんだ。すてきなお洋服をたくさん置いて、来た人みんなをしあわせにするんだ。――そう、魔法にかけられたみたいに。

 その夢が今、私の手の中にあるよ、おばあちゃん。

 今の私を、天国から見てくれているかな。

 そっとベッドサイドに目をやると、写真立ての中のおばあちゃんが笑ってくれたような気がした。