ポンコツ女子、異世界でのんびり仕立屋はじめます

 セピアに押される形で店内に足を踏み入れる。中に入ると、現代日本の服屋とはやはり違っていた。服屋というより応接室のような雰囲気だ。

 天井まで届く、布見本が入った棚。トルソーにかかった巻尺。おそらくサンプルであろうドレスが何着か飾ってある。決して派手ではないのに、目をひくデザイン。美女のドレスもそうだが、身体に寄り添って女性を美しく見せるデザインだ。ふだん甘めの服はあまり着ないのだが、この店のドレスには袖を通してみたいと思った。

「さっき、役場の人の紹介って言ってたよね」

 濃い飴色のテーブルと一緒に並べられた猫足のソファに、三人で腰を下ろす。セピアに紅茶と焼き菓子まで出してもらった。客ではないのに頂いてしまってもいいのだろうか。

「あ、はい。実は働き口を探していまして……。こちらが紹介状です」

 紹介状をテーブルの上に置くと、クラレットと呼ばれていた美女が眉根を寄せた。

「働くって……。まさかここで? あなたが?」

 値踏みするように上から下まで眺められて、いたたまれなくなる。そりゃあ私は彼女のような美女ではないが、さすがに傷つく。

「あの、先ほど行き倒れているところをアッシュさんに助けてもらって……。その縁で役場の方に紹介してもらったんですが……」

 こんなに採用が難しい店なら先に言ってくれ、という気持ちで説明すると、クラレットとセピアが同時に目を丸くした。