「ケイトがそう言うなら……。俺は何も言わないが」
アッシュが、つないだ手をぎこちなく握り返してくれる。この人の、不器用な優しさが大好きだ。
「桜井さんは、私の見込んだとおりの人だったわ。あなたたちが恋仲になれて、本当に良かった」
有栖川さまも、ほっとしたように笑顔を見せる。
「おばあさま。一年間放っておいたのは、ケイトを試す意味合いもあったんでしょう? 『アッシュの恋人は私が認めた人じゃないと』ってよく言っていたものね」
「さあ、どうでしょう。ご想像にお任せするわ」
私は有栖川さまが、私に長い長いお休みをくれたんじゃないかと思っている。『一年間、私の愛した世界をじゅうぶんに楽しんで』って。だってここには彼女の愛したお店と、三人の孫たちがいるのだから。
「あ、そうそう。あなたたちに言っておきたいことがひとつあるの。アッシュは桜井さんの世界に一緒に行こうと思っているみたいだけれど、一回の転送魔法ではひとりしか運べないし、エルフたちがまた魔力を蓄えるのには一年かかるわよ」
アッシュと手を繋いだまま、「えっ」と顔を見合わせる。
「つまり、俺がケイトの世界に行けるのは一年後ってことか?」
「だったら、おばあさまがアッシュを飛ばしてあげればいいじゃない。ケイトにしたみたいに」
「私も魔力を使い切ってしまったもの。そんなに都合よくいかないわよ」
クラレットが有栖川さまに詰め寄ってくれたが、有栖川さまは残念そうに首を横に振った。
アッシュが、つないだ手をぎこちなく握り返してくれる。この人の、不器用な優しさが大好きだ。
「桜井さんは、私の見込んだとおりの人だったわ。あなたたちが恋仲になれて、本当に良かった」
有栖川さまも、ほっとしたように笑顔を見せる。
「おばあさま。一年間放っておいたのは、ケイトを試す意味合いもあったんでしょう? 『アッシュの恋人は私が認めた人じゃないと』ってよく言っていたものね」
「さあ、どうでしょう。ご想像にお任せするわ」
私は有栖川さまが、私に長い長いお休みをくれたんじゃないかと思っている。『一年間、私の愛した世界をじゅうぶんに楽しんで』って。だってここには彼女の愛したお店と、三人の孫たちがいるのだから。
「あ、そうそう。あなたたちに言っておきたいことがひとつあるの。アッシュは桜井さんの世界に一緒に行こうと思っているみたいだけれど、一回の転送魔法ではひとりしか運べないし、エルフたちがまた魔力を蓄えるのには一年かかるわよ」
アッシュと手を繋いだまま、「えっ」と顔を見合わせる。
「つまり、俺がケイトの世界に行けるのは一年後ってことか?」
「だったら、おばあさまがアッシュを飛ばしてあげればいいじゃない。ケイトにしたみたいに」
「私も魔力を使い切ってしまったもの。そんなに都合よくいかないわよ」
クラレットが有栖川さまに詰め寄ってくれたが、有栖川さまは残念そうに首を横に振った。



