ポンコツ女子、異世界でのんびり仕立屋はじめます

「ちょっとケイト、何ぼうっとしているのよ、私たちの勝ちなのよ!」

「……勝ち?」

「そうよ! 五十人全員が、私たちのドレスを気に入ってくれたのよ!」

 クラレットの言葉の意味を理解した瞬間、ぶわあっと、涙が一気にあふれてきた。

「ほんとに? ほんとに私たちが勝ったの? 良かった、みんなのドレスが認められて、ほんとに良かったぁ……!」

「馬鹿ね。あなたは私たちじゃなくて、自分の心配だけしていれば良かったのよ」

 ふわりと肩を抱いてくれたクラレットの言葉に、余計に涙が止まらなくなった。

 ぱちぱちぱちと、拍手が聞こえて顔を上げる。どこかすっきりした顔で、ウォルが健闘を称えてくれていた。

「完敗だね。ケイトのことは潔く諦めるよ。君はどうするんだい? 勝ったほうがケイトを好きにできる約束だけど」

「はい。俺は、ケイトをもとの世界に帰してやりたいと思っています」

 その答えに、胸がズキッと痛むのを感じた。勝手だな、私。自分でプロポーズを断っておいて、まだどこか期待しているなんて。

「ふうん。つまらない答えだね」

「すみません。でもその前に、伝えたいことがあります。――ケイト」

 ウォルと対峙していたアッシュが私に向き直る。

「は、はい」

「舞踏会のあの日、君は『私のことが好きではないんだろう』と言ったな。責任感だけでプロポーズしたのだろうと」

「はい……」

 うつむいた私を見て、アッシュはふう、と深呼吸をした。