「着きました。ここです」
両開きの扉を黒服が開け放つ。ギギィ、という仰々しい音とともに現れたのは、巨大なウォークイン・クローゼット。
「な、なにこれ。この国じゅうのドレスルームを集めたような部屋じゃない」
クラレットの言葉は決しておおげさではない。いくつものドレッサーと姿見、何列にも並べられたラックには、ドレスがずらっとかかっている。
天井まで届く棚には、帽子や靴がぎっしり。
「お城で暮らしている王族女性全員の、衣替え用のお召し物が詰まっておりますから。セレモニー用の特別な衣装もこちらで保管しております」
ぽかんとした私たちの顔を見て、黒服が説明してくれる。
「まるで、魔法のクローゼットみたい……」
ちいさいころ、おばあちゃんとふたりでよく空想していた。世界中のすてきなお洋服を集めた、魔法のクローゼットがあったらいいねって。
この場所は、この国中のすてきなものを凝縮したみたい。きらきらした女の子の夢と、可愛くなりたい気持ちが詰まってる。
「確かにすてきだけど。ケイト、見惚れてる場合じゃないわよ」
「う、うん」
メイドさんたちと手分けして、女性たちに着付けていく。私が手に取ったドレスはひときわ私を強く睨んでいた側室女性のもので、わかりやすく嫌な顔をされた。
「あら、あなたが着付けてくださるのね」
「はい、よろしくお願いします」
「ごく普通の地味な方に見えますけど、王子を篭絡させるなんて、どんな手を使ったんでしょ。よっぽど魅力がおありなのね」
嫌味はとりあえず無視しておいて、よいしょ、と今着ているドレスを脱がしていく。きつく締め上げたコルセットがとても窮屈そうだ。
両開きの扉を黒服が開け放つ。ギギィ、という仰々しい音とともに現れたのは、巨大なウォークイン・クローゼット。
「な、なにこれ。この国じゅうのドレスルームを集めたような部屋じゃない」
クラレットの言葉は決しておおげさではない。いくつものドレッサーと姿見、何列にも並べられたラックには、ドレスがずらっとかかっている。
天井まで届く棚には、帽子や靴がぎっしり。
「お城で暮らしている王族女性全員の、衣替え用のお召し物が詰まっておりますから。セレモニー用の特別な衣装もこちらで保管しております」
ぽかんとした私たちの顔を見て、黒服が説明してくれる。
「まるで、魔法のクローゼットみたい……」
ちいさいころ、おばあちゃんとふたりでよく空想していた。世界中のすてきなお洋服を集めた、魔法のクローゼットがあったらいいねって。
この場所は、この国中のすてきなものを凝縮したみたい。きらきらした女の子の夢と、可愛くなりたい気持ちが詰まってる。
「確かにすてきだけど。ケイト、見惚れてる場合じゃないわよ」
「う、うん」
メイドさんたちと手分けして、女性たちに着付けていく。私が手に取ったドレスはひときわ私を強く睨んでいた側室女性のもので、わかりやすく嫌な顔をされた。
「あら、あなたが着付けてくださるのね」
「はい、よろしくお願いします」
「ごく普通の地味な方に見えますけど、王子を篭絡させるなんて、どんな手を使ったんでしょ。よっぽど魅力がおありなのね」
嫌味はとりあえず無視しておいて、よいしょ、と今着ているドレスを脱がしていく。きつく締め上げたコルセットがとても窮屈そうだ。



