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 それから一週間。四人総出での作業が始まった。

 食事は、手の空いた人がテイクアウトで買ってくる。仮眠を取るときは一人ずつ交代で、二階の私の部屋を使ってもらうことにした。

「ケイト。この、第二王子の叔母だという婦人はどんな人だ?」

「六十歳くらいのふくよかな女性でした。髪は白髪の混じった茶色で、目の色は緑。濃い紫色のゆったりしたドレスを着ていましたが、似合うのはこっちのライラック色だと思います」

 アッシュと相談しながら、ひとりひとりのデザインを決めていく。

「この人は華奢でなで肩だったので、パフスリーブのほうがいいです」

「こっちの人は胸が大きいのを気にしていたから、あまり強調しないデザインにしてください」

「あ、刺繍の糸は金色より銀色がいいと思います」

 ものすごい速さで、アッシュがスケッチブックに五十枚のデザイン画を仕上げていく。私も、今まで勉強してきた知識をフル動員して、アッシュに応える。

 デザインが決まってからは、役に立てることがあまりないんじゃと思ったけれど、レースやボタンを縫い付ける簡単な作業はやらせてもらった。

 あとは、フロッキープリントに使うフェルトを切ったり、裏に糊をつけたり。

 何かに使えるかなと思って、細長い布で帯結びをいろいろ試していたら、アッシュが気に入ってくれた。着物ドレスが好評だったこともあり、布地が足りるぶんの何着かは新作でいくことにした。

 サンプルをほどいて、また縫い直して。布地を足したり、減らしたり。目がかすむような地道な作業が毎日繰り返される。

 こんな細かい作業をずっと続けてきたアッシュとセピアが、とてもすごい人たちに思えた。

 アッシュの書き起こしたデザイン画から、瞬時に型紙を作り出すセピア。アッシュの鋏さばきと、魔法のような針の動き。

 人間国宝のようなふたりの手つきに思わず見惚れてしまったことも多かったけれど、すぐに気を取り直して自分の仕事にかかった。

 仕立て屋スティルハートは、この国の宝だ。だから絶対、王族にもウォルにも、みんなの凄さを認めてもらうんだ。

 そして怒涛の一週間は瞬く間に過ぎ、約束の日になった。