「でかした」

 アッシュが、満足そうな笑顔を見せてくれる。

 褒めてもらって、レアな笑顔をもらえただけでも、じゅうぶん大きなお土産になるなと思った。

 飛ばされたのがこの世界で良かった。みんなに――アッシュに出会えて、恋ができて、本当に良かった。

 私たちの間にあった空気が、希望に満ちたものに変わっていく。

「さあ、じゃあ今日から泊まり込みで作業よ! 私は家からサンプルをありったけ持ってくるから、アッシュはケイトの話を聞きながらデザイン画を描いてちょうだい」

「僕はアレンジに使えそうな材料を買ってくるよ」

 クラレットとセピアはばたばたとお店を出て行ってしまった。

 私でも役に立てる、みんなで力を合わせて試練を乗り越えられると思うと、勇気がむくむくと沸いてきた。

 私のせいで迷惑をかけてしまっているという申し訳なさは変わらない。でも、こんなにみんなが頑張ってくれているときに、私だけ落ち込んではいられない。

 私が先陣を切って全力で挑まなければ! そしてウォルを、ぎゃふんと言わせてやる!

「ケイト、その前にお茶を淹れてくれるか」

 鼻息を荒くしていると、アッシュに頭をぽんと叩かれた。

「はい!」

 徹夜になってもいいように、思いっきり濃い紅茶を淹れよう。ミルクとお砂糖もたっぷりいれて、ティー・オレに。きっと、糖分もたくさん必要になる一週間だから。

「甘すぎよ」ってクラレットに言われたら「これが異世界でのトレンドなのよ」と言ってやろう。

「やってやるぞー!」

 キッチンでお湯を沸かしながら、私はひとり、拳を高く振り上げた。