ポンコツ女子、異世界でのんびり仕立屋はじめます

「ケイトさんは言葉も通じるみたいですし、どこかで仕事をしてお金を貯めるということになりますね。もちろん、住居など最低限の生活はこちらで保障させてもらいますが、さすがに転送魔法の費用を国庫から出すわけにはいかないので」

 どうやら聞き間違いではなかったようだ。なんだか、親切なようで残酷なことを言われているような気がする。

「つまり、帰るためには一年間この世界で仕事をしろと……」

「そういうことになりますね。ちなみに、もとの世界ではどんなお仕事を?」

「アパレル……、服屋の店員です」

「服屋……。仕立て屋の売り子ということですか?」

 仕立て屋ということは、ここはまだ既製服が出回っていない世界なのだろう。着るものはすべてオーダーするか、自分で作るしかない。贅沢なようでちょっと不便な時代。

「たぶん似たような感じだと思います」

「ああ、それならちょうど、さっきケイトさんを連れてきてくださったスティルハートさんが仕立て屋を経営なさってるんですよ。この国で一番繁盛している仕立て屋ですから、もしかしたら雇ってもらえるかもしれませんね」