ポンコツ女子、異世界でのんびり仕立屋はじめます

「ケイト、ここにいたのか」

「アッシュさん」

 踊りがひと段落したあとは、ホールの端に料理が並べられた。お酒を飲む人、踊る人、おしゃべりをする人、のみっつになんとなくかたまりがわかれている。

 私はそれらのどれにも属しないすみっこで、壁にもたれかかってカクテルを飲んでいた。

 たくさんの女性にダンスを迫られていたアッシュが、疲れ切った顔で近寄ってくる。

「お疲れさまです。ここで見ていましたが、アッシュさん、大人気でしたね」

「本当に疲れた。やはりこういう場より、作業室で針を握っていたほうが自分の性分に合っている」

 動いて喉が渇いたのだろうか。黒服がさっと差し出したお酒をおいしそうに飲み干している。アッシュがお酒を飲むところを見たことがないけれど、この飲みっぷりだと強いのかも?

「ケイトこそ、大丈夫だったのか。第二王子とのダンスは」

「意外と大丈夫でした。悪い人ではない気がします。でも……」

「でも、どうした」

 黒服が、空になったグラスのかわりにアッシュにおかわりを渡す。アッシュはお礼を言ってそれを受け取った。

「なんだか、よくわからない人でした。つかみどころがなくて少し怖いような、不思議な気持ちです。何が言いたかったのか、よくわからない……」

「そうだろうな。そういう人だというのはわかる」

 結局、めずらしいから異世界人に会いたくて、いろいろ質問したかっただけなのだろうか。自分のお祝いだというのに王子の姿は消えてしまったし、周りはそれでも勝手に盛り上がっているし。

「楽しそうですね、みんな」

 若い令嬢たちは女同士集まっておしゃべりに精を出している。パートナーは大丈夫なのかと心配になるところだが、若い男たちもお酒を飲みながら笑い声をあげているし、問題ないのだろう。同窓会でよく見る構図だ。