ポンコツ女子、異世界でのんびり仕立屋はじめます

 最後の一段を下りて顔を上げたとき、そこには映画で見た舞踏会そのままの景色が広がっていた。

 ぜんぶダイヤモンドでてできているんじゃないかと思うくらいの、きらきら輝くいくつものシャンデリア。髪を結いあげた貴婦人たちと、豪華絢爛なドレス。羽のついた扇。

 高い高い天井を見上げると、天使たちが遊んでいた。一瞬本物かと思ったけれど、精巧に描かれた天井画だった。床は、光沢感のある石で複雑なモザイク模様が描かれている。

 想像していた『お城のダンスホール』をいざ目の当たりにすると、その迫力に鳥肌が立ってしまった。だって、映画のセットでも美術館でもない。生きている本物の王族たちが、王子さまがこの場所にいるんだ。

 クラレットとセピアはすでに、たくさんの貴婦人に囲まれていた。裾をつまんだり、回転したりしながら、ドレスの説明をしているのがわかる。さっきは緊張していたみたいだけれど、今はふだんのクラレットに戻って生き生きしている。というか、商売モードと言うべきか。

 私たちの周りにも、そろそろと取り巻くように人が近寄ってきている。

「外国人かしら」

「異世界人って聞いたわよ」

「言葉は通じるのかしら」

 という会話を聞く限り、周りの人も戸惑っているようだ。

 そのままそっとしておいてください、と言いたいが口に出せるわけもない。

「あなた、話しかけてみなさいよ」

 と言われた貴婦人が、私の前に進み出た、そのとき。

 カツーン、カツーンと靴の踵を鳴らし、一人の男性が私たちのほうに向かってきた。

「あ……」

 まわりの人たちが、あわてて私たちから離れ、道をあける。

「すまないね。彼女に最初に挨拶するのは、私の役目にさせてくれるかな」

 宝石のついた王冠と金色の裏地のマント、白くてきらびやかな正装、目から鼻まで覆う奇妙なマスクをつけたその人は、以前遠目で見た第二王子その人だった。