ポンコツ女子、異世界でのんびり仕立屋はじめます

「仕立て屋スティルハートさまから、セピア・スティルハートさま、クラレット・スティルハートさま」

 黒服の声がホールに響き渡り、腕を組んだセピアとクラレットが広い階段を降りて行く。

 いよいよ次に呼ばれる、と思うとくらりと眩暈がした。

「大丈夫か?」

 腕を組んでいたアッシュが、私がふらついたのに気付いて支えてくれる。

「すみません。あまりのきらびやかさに、ちょっと眩暈が……」

 気が付くともう、舞踏会の幕は上がり、私たちは舞台裏にいる状況である。

 馬車でお城についたあとは、従者に案内されて場内をぐるぐる歩き、気付いたらホールの二階に来ていた。大階段とつながった、ちょっとしたスペースには待合室のようにソファセットがいくつか置いてある。

 正直、緊張しすぎて道順も覚えてない。こちらから姿は見えないが、ホールに王族たちが入ってくる声がしたときは、心臓が壊れるかと思った。

 まわりにいる貴族たちは慣れているのか、平然とおしゃべりを楽しんでいる。こういう社交界では独身の男女が来るものなのか、若くて華やかな女性が多かった。貴族の中では一番親しいエリザベスさまは、婚約後だからなのか来ていない。

 顔見知りのお客さまがちらほらいたりはしたが、呼ばれる順番が私たちより早いのでゆっくり挨拶している時間もない。

 あのクラレットでさえ口数が少なくなっていたし、アッシュはもともとあまりしゃべらないし、セピアだけが「大丈夫だよケイト! リラックスリラックス」と励ましてくれたがあまり効果はなかった。

「エリザベスさまの晩餐会に比べると、なんだか若い人が多いですね」

 緊張をほぐすためにアッシュに話しかけてみたのだが、

「第二王子の生誕祭を兼ねているからな。側室を吟味するために若い令嬢や、評判の美人が多く呼ばれると聞いたことがある。本当かどうかはわからないが」

「……うわあ」

 と、生々しい話を聞かされた。カウントダウンイベントで遠くから見た第二王子。その仮面の中の素顔がたいそうな変態に思える。