ポンコツ女子、異世界でのんびり仕立屋はじめます

「それにこのドレスはこの国の歴史を変えるはずだ。間違いなく、新しい流行が生まれるぞ」

 いつもぴしっとしているアッシュの髪もシャツも徹夜明けでくしゃくしゃで、それなのに表情は生き生きと輝いていた。

 まるで新しい発明にわくわくしているときの、少年のような。

「僕たちのフロックコートには、やっぱりチーフをキモノにすることにしたんだよ。僕が黒でクラレットとペア、アッシュが赤でケイトとペアだね。ドレスを邪魔しないように、フロックコートはふたりともダークグレーにすることにした」

 アッシュとペア、という言葉に胸がどきりとする。

「身長差的には逆のほうがいい気もするけれど、まあいいわ。ケイトにはアッシュがついてくれていたほうが安心だし」

「舞踏会も男女ペアで踊ることになっている。入場のときもこのペアだから間違えないよう気をつけろ」

 アッシュには、ただ隣の席の女の子とペアになりました、くらいの意味しかないのだろう。

 他のペアはみんな恋人や夫婦だろうから、私たちだけ場違いだったらどうしよう、アッシュに冷たくされたら嫌だな……と、悲しい気持ちになった。

 ――そんなの、私がアッシュに恋人みたいに振る舞って欲しいみたいじゃないかと気付いて、頭をぶんぶん振る。

「どうしたのよさっきから、むっとしたり沈んだり、赤くなったり」

 採寸室で着付けをしていると、クラレットにつっこまれた。

「なんでもない。ちょっと緊張してるだけ」

「ふぅん……」

 意味ありげに微笑まれてしまった。オネエには私の考えていることが全部読まれているような気がして、ときどき怖い。

 クラレットだけは敵に回したくないな、友達で本当に良かった、と心底思う。