ポンコツ女子、異世界でのんびり仕立屋はじめます

「それはいいかもしれない。奇抜なデザインにするよりも、スタンダードなドレスの形でインパクトのある柄にしたほうが、受け入れられやすいだろう」

「そうね。たとえばスカート部分の一部だけキモノ柄にしたら素敵じゃない?」

「着物ドレスみたいな感じかな? もとの世界でも最近流行り始めたんだ。襟元とか袖のデザインを残すタイプもあるよ」

「なにそれ、素敵じゃない!」

 興奮したクラレットが大きく広がる袖は取り入れたい、だの、舞踏会なら胸元の大きく開いたデザインじゃないといけない、だのと主張し、アッシュはスケッチブックに色鉛筆を走らせている。

 アッシュがデザイン画を描くところを初めてみたが、すごい速さだ。クラレットの話を聞きながら、一枚、もう一枚と次々にスケッチを完成させている。

 ちらりと横目で覗き込んでみたが、着物の柄が、和風テイストを残したまま薔薇や白鳥の柄に変わっていて、とても驚いた。私の描いたつたないスケッチで、ここまで特徴を把握できたなんて。

「素敵……。アレンジしてあるのに、ちゃんと着物の柄だってわかりますね。色遣いも本当の着物みたい」

「そうか、そう言ってもらえて安心した。ケイトのおかげでまったく新しいドレスに挑戦できそうだ。俺もわくわくしているよ」

 アッシュがスケッチの手をとめて応えてくれる。いつもより饒舌なのは、わくわくしているからなのか。

「アッシュの筆の運びがいつもよりさらに速いもんね。インスピレーション刺激されたんでしょ?」

「これは期待できそうね。私とケイト、二着ぶんお願いね。できればあなたたちふたりの正装も、ペアっぽくしたいんだけど」

「胸に刺すチーフの柄をキモノ柄にしたり、いろいろ工夫はできそうだな。やってみる」

 そのあと、私たちはおいしい料理に集中したのだが、アッシュはサンドイッチを片手でつまみながらも、スケッチブックから目を離さなかった。