ポンコツ女子、異世界でのんびり仕立屋はじめます

「俺たちもフォローする。負担なのはわかるが、出席してくれないか」

 めったにないアッシュの頼みごとだ。こんな懇願するような顔をされたら、黙って首を縦に振るしかできない。

「わかりました……。失礼にならないように頑張ってみます……」

 戦国時代じゃないんだから、失礼があったからといって打ち首にされるということもあるまい。異世界に来てからというもの、「死にはしないから大丈夫」という考えになってきている気がしておそろしい。

「大丈夫よ。うんと贅沢なドレスを仕立てましょ」

「ダンスの練習だったら、僕が付き合うよ」

 クラレットとセピアがなぐさめてくれたが、不安は拭えない。

 憎々しげな顔で、クラレットがぼそっとつぶやく。

「あの方、ついにこんな強引な手に出たのね」

 それが男バージョンのときの低い声だったので、私はそれがどういう意味なのか、クラレットにたずねることができなかった。

 * * *

「ケイト。王族が圧倒されるようなドレスを作るわよ。あなたもアイディアを出してちょうだい」

 とクラレットが言い出したのは数日後のこと。

「ど、どうしたのいきなり」

「招待状の返信を、お城から来た従者に渡したのよ。そうしたら、『くれぐれも殿下に恥をかかせないお召し物で来てくださいね。ああ、仕立て屋さんにはいらない心配でしたね』って鼻で笑われたのよ! キィーッ、悔しい! あんな、支給品の制服すらまともに着こなせてない男に何がわかるっていうのよ!」

 鼻息を荒くしながらハンカチをかみしめている人を、リアルで初めて見た。

 私がその場にいたら言い返してしまいそうだし、クラレットがこんなに怒るのも無理もない。